オレンジワインについて

オレンジワインとは?

琥珀色のオレンジワイン

その名前からついオレンジから造られたフルーツワインを想像してしまいがちですが、オレンジワインは白ブドウを使って赤ワインの製法で醸造したワインです。人工的な着色ではなく、オレンジワインは全て自然なものからできています。黒ブドウを使って白ワインの製法で醸造するロゼワインと対極の存在になります。

■ 赤ワインの作り方
黒ブドウ(皮が紫や黒いブドウ)を皮や種ごと醸造します。
■ ロゼワインの作り方
黒ブドウ(皮が紫や黒いブドウ)の皮や種を取り除いて醸造します。
■ 白ワインの作り方
白ブドウ(皮が黄色や緑のブドウ)の皮や種を取り除いて醸造します。
■ オレンジワインの作り方
白ブドウ(皮が黄色や緑のブドウ)を皮や種ごと醸造します。

オレンジワインの歴史

オレンジワインという種類のワインは聞きなじみがなく、新しくできたワインと思う方もいると思いますが、実際は何世紀も前から存在している歴史あるワインです。オレンジワインの起源は、ワイン発祥の地と言われるジョージア(グルジア)で、約8000年も前からワイン造りをしている国です。ジョージアでは、伝統的にクヴェヴリと言われる土中に埋めた陶器の中で、白ブドウの果皮や種を果汁と一緒に発酵させて白ワイン(オレンジワイン)を造っていました。この製法は2013年にユネスコ無形文化遺産に認定されています。

しかし、ジョージアは旧ソ連の支配下にあったため、オレンジワインは国際市場には出まわらず忘れ去られたワインでした。そんなオレンジワインを現代に復活させたのが、イタリア・フリウリ州の生産者グラヴナーです。理想のワインを造るため、様々な発酵方法を試していたヨスコ・グラヴナー氏は、ジョージアワインにインスパイアを受け、1998年に初のオレンジワインを造りました。

このオレンジワインがジャーナリストから高い評価を受け、イタリアの自然派ワイン生産者たちに瞬く間に広まりました。ここからオレンジワインの再興が始まります。さらに近年ではジョージアワインが流通し始めたこともあり、オレンジワインはさらに一般的になりました。ヨーロッパの国々はもちろん、オーストラリアやカリフォルニアなど新世界でも造られているほどです。

ちなみに、この「オレンジワイン」という呼び名はイギリスのワイン商が2000年代に作った造語で、オレンジワインの伝統的な産地であるジョージアでは「アンバーワイン」という名称を使用しています。

オレンジワインの味わい

オレンジワインの味わいは、アプリコットやオレンジピールなどのアロマティックな白ワインのような香りと、赤ワインのような渋味と苦味を併せ持った飲みごたえのある味わいです。また、製造過程で白ブドウの皮や種も含まれているため、皮由来の香りや、通常白ワインにない渋味を伴う複雑な味わいのワインになります。

このブドウの皮や種から抽出されるタンニンなどのポリフェノールが多く含まれているのも特徴で、健康に良いことにも注目されています。

オレンジワインに使われるブドウ品種

ジョージアの固有品種

オレンジワインはどんな白ブドウでも造ることができますが、よく使われるブドウ品種をご紹介します。

アロマティック品種

芳香性が高いヴィオニエやゲヴェルツトラミネールなどは、よく使用される品種の一つです。
皮にはブドウの香り成分が多く含まれているため、それをさらに抽出するために醸し発酵が行われることが多いです。

酸味の強い品種

ジョージアの固有品種ルカツティリのように、酸味の強い品種が使われることも多いです。
理由は、オレンジワインは茎ごと醸し発酵を行うことにより、茎に含まれるカリウムと酸が結合し、出来上がるワインの酸味が落ちてしまうためです。もともと酸味の豊富な品種を使うことにより、酸味とタンニンを備えた長期熟成も可能な高品質ワインに仕上がります。

その他にもピノ・グリなどやや骨格のゆるい白ブドウ品種で、タンニンを骨格としたワインが造られることもあります。

なぜ今、オレンジワインが世界で流行しているのか?

オレンジワインが近年再注目され、世界で人気となっている理由は2つあります。

① オレンジワインが自然派ワイン(ナチュラルワイン)であること

これがブームとなった最大の理由で、オレンジワイン流行の原動力です。通常、白ワインは自然の酸化防止剤であるタンニンを持たないため、赤ワインに比べると亜硫酸(酸化防止剤)が多めに必要になります。実際にEUの規定でも、白ワインは赤ワインよりも若干多い亜硫酸を含むことが認められています。

しかし、オレンジワインは赤ワインと同じようにタンニンがあるため、亜硫酸の添加を控えたワイン造りが可能なのです。ここに目を付けたのが、世界的ブームとなっているナチュラルワインの生産者です。彼らは、白ワインをオレンジワインとして造ることで、自分たちのワインへの添加物を少なくすることができました。そうして添加物の少ない最新のワインとしてナチュラルワインブームに乗り、世間に認知されました。

つまり、オレンジワインブームはナチュラルワインブームの派生の一つだと言えます。しかし、現在ではナチュラルワイン生産者以外もオレンジワインを造るほど一般的なカテゴリーになっているので、必ずしもオレンジワイン=ナチュラルワインではありません。

② これまでにない料理との相性

もう一つの理由は、その独特な風味による料理との相性です。オレンジワインの独特な厚みのある味わいは、白や赤ワインと相性があまり良くなかった料理ともマッチします。例えば、辛い香辛料を使ったインド料理や韓国料理は、白ワインでは繊細すぎ、赤ワインでは強い渋味が辛味と喧嘩してしまうので、ワインを合わせることが難しい料理です。しかし、そんな料理と中間のオレンジワインは良く合います。

ここに目を付けたのが、世界のトップソムリエたちです。オレンジワインは、今までになかった面白いフードペアリングが可能だったため、彼らがレストランで提供し、従来のファインワイン消費者に認知されることに繋がったのです。
今後、もし赤ワインか白ワインか迷った時は、オレンジワインをチョイスしてみてはいかがでしょうか。